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波打ち寄せる歴史の地
イングランド本土からケルト海(大西洋)へ南西に伸び、北側はブリストル海峡、南側はイギリス海峡に挟まれているコーンウォール半島。風光明媚なリアス式海岸が有名で、イングランド最西端のランズエンド岬があります。ここでは、大西洋を渡って吹きつけてくる強い西風によって断崖が浸食され、長い時間をかけて複雑に入り組んだ海岸線が作られてきました。やがて断崖と断崖の間にできた天然の砂浜の入り江を利用して良い港が生まれます。コーンウォール地方最大の都市ではプリマスが有名ですが、プリマスはかつてアルマダの海戦(1588年)でスペイン艦隊を撃破したイングランド艦隊や、アメリカへピューリタンが移住したメイフラワー号(1620年)の出発地として知られており、歴史の舞台に足跡を残してきた港湾都市でした。
チャイナクレイピット
コーンウォールのイギリス海峡側の海沿いの町セントオーステルには、チャイナクレイピットとよばれる広大な採石場があります。そこは18世紀半ば頃のイギリス陶磁器産業の中心地でした。地元では「コーニッシュアルプス」と呼ばれる山岳地帯で、現在のA391号線をコーンウォールに向かって走っていくとすぐ前方に白い山々が見えてきます。白く見えるのが陶土の採掘跡です。
大昔からカオリンという名で呼ばれていた陶土は、人類に知られてきた最も古いうつわの原料でした。一般的に鉱物は、水のある場所で流れによって一か所へ集められ、やがて段々と凝縮し蓄積されていきます。セントオーステルは海と川で囲まれた場所に位置していたので、その地層に豊富な粘土層が形成されたと考えられます。豊かな良質の陶土を使ったものづくりのひとつが、T.G.グリーンのコーニッシュウェアでした。